元々工場は宿場店の裏にありましたが、機械の騒音と粉塵を配慮し、15年ほど前に工場を移しました。
略式ではありますが、合わせ小判弁当を例に曲物の作り方をご紹介していきます。
■曲師
花野屋五代目店主 土川正美
節のない、目の詰んだ木曽ヒノキを材料として選定し、薄板を挽きます。これが曲がる側板の材料となります。
厚みと寸法に気を配り、一枚一枚丁寧に仕上げていきます
材料によって厚みが不均一だと、曲げたときに円周が変わってしまうため、最後の行程で板がはまらなかったり、緩すぎて隙間ができる原因になります。
側板は、曲げてから約5cm〜6cmののりしろで重ね合わせて閉じますが、そのまま閉じると合わせ目の厚みが倍になってしまうため、この段階で合わせ目をそれぞれ斜めに削り、厚くならないようにしておきます。
合わせ目のことを“キメ”といい、キメを削ることをキメかきといいます。
左は完成した製品を上から撮った写真ですが、赤い楕円で囲まれた部分がキメの合わせ目部分になります。
キメが薄すぎると曲げて合わせたときにこの部分が外側へ膨らみ、逆に厚すぎるとカーブが美しく仕上がりません。
特製のトタン容器にお湯をはり、キメをかいた側板を入れます。
板が浮かないように上から板とおもりでしっかりとお湯に沈め、
約80度のお湯で40分間煮ます。
ヒノキの香りが工房いっぱいに広がります。
側板をお湯から出し、「ほた」という道具に板をはめて、一気に曲げます。
この曲げ作業で曲物の形が決定します。
大きさの違う「ほた」を使い分けて身と蓋の側板を曲げていきます。写真は合わせ小判弁当の蓋を曲げているところです。
途中で力を抜いたりすると、形が歪んでしまいます。
歪んでしまうと曲物の身と蓋が合わなかったり、不格好になってしまいます。
曲げた板は「ほた」からはずし、木ばさみで挟んで「くち」で留めます。この木ばさみは先代から使っている大切な道具です。
「木ばさみ」と「くち」で合わせ目を固定して一昼夜かけて乾燥させます。
乾燥してしまえば木ばさみを取っても形が崩れません。
乾燥した側板を木ばさみから外し、糊付けしてから桜の皮で縫って閉じます。
最初に「木さし」という道具を使って、桜の皮が通る穴を空けていきます。
桜の皮は道具で鞣し、薄くしてから細長く切って使います。
木さしで空けた穴に一つ一つ手作業で桜の皮を通し、縫っていきます。
力を入れすぎると切れてしまうので、力の加減に気をつけます。神経を使う細かい作業です。
完成した側板の縁に糊を付け、楕円に切った板をはめます。
板は目の詰んだ木曽サワラを選んで、既定の厚さに仕上げて使います。
写真は小判弁当なので、小判型に切ったものをはめます。
(写真右上に少し見えている板です)
隙間無くはまらなければ製品にはなりません。
面取りカンナとペーパーを使って面を仕上げてできあがりです。
爪などで木地を傷つけないように気をつけて仕上げていきます。
これで木地はできあがりです。
この後生漆を塗ります。
白木地に漆を塗ります。
木に刷毛を使って漆を擦り込むように塗ることから「すり漆」仕上げと言われます。(漆を塗った後に布や紙で拭き取ることから「ふき漆」と呼ぶこともあります)
木によって艶のでないものは余分に塗って仕上げます。
写真は一回目の塗りなので、まだまだ白っぽい色をしています。
漆を塗って、漆が乾いたらペーパーで面を研いで拭き取る、という作業を4回繰り返してやっとできあがりです。木地の仕上がりと塗りが良くなければ、いい艶は出ません。